久しぶりにアガット村のアメリカ海軍基地ゲート前にある太平洋戦争記念館に行ってきました。

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特別展示を案内するフライヤー。

年間90万人の日本人が訪れるアメリカ合衆国準州グアム島。日本人旅行者はわずか3時間ほどの空の旅で常夏のアメリカ文化を謳歌し、グアム古来のチャモロ文化に親しみ、ヴァカンスを楽しめます。笑顔が耐えない今日のグアムに至るまでには、スペイン、アメリカ、グアム、日本の間に忘れてはならない重い辛い歴史があります。太平洋戦争記念館には、その歴史のなかでも、第二次世界大戦時代(太平洋戦争時代)記憶の一部を伝える展示がされています。


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第二次世界大戦にまつわる展示は、
当時の銃などの遺品と写真によるパネル解説が中心。


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館内の壁に飾られた、戦時下のプロパガンダポスターは30枚以上。


太平洋戦争記念館に入るとまず、1941年の日本軍の上陸からグアム支配に至る3日間の出来事が時間経過とともに説明されています。
そして最近新しく左手に展示されたのが、第二次世界大戦下のアメリカ国内でのプロパガンダポスターです。壁に飾られているポスターは、いずれもアメリカ市民の公的労働を賞賛し、節約を呼びかけ、敵対意識を煽る、いかにもアメリカのポップアート的な手法の作品ばかりです。
当時の日本もそうであったように、アメリカは銃や戦車などを作る軍事産業と同等に、一般市民の思想教育に大変力を入れていたことをうかがわせます。


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左のポスターは、寸暇を惜しまず働くよう市民に呼びかけています。
右のポスターでは「あなたの仕事に国の勝利が委ねられている」と訴えます。


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左のポスターは大切な彼がアメリカへ戻るためにと、女性へも働くことを
推奨しています。右のポスターは、使い捨ての食用油をも
貴重な燃料となるため業者へ持ち寄るよう呼びかけています。


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左のポスターは「ナチスドイツの象徴である卍から
アメリカの子供たちを守ろう」と訴えています。
右のポスターは、日本帝国とナチスドイツに狙われている
アメリカの地図に危険が迫っている、とのメッセージを込めています。


これらのプロパガンダポスターの制作には一流の芸術家や映画関係者も加わったようで、ポスター作者の中には画家・イラストレータとして有名なノーマン・ロックウェルの名前もありました。これらのポスターコレクションはワシントンD.C.にある国立公文書ビルで、1994年から1995年にかけて展示され反響を呼びました。今回の展示には残念なことに日本語での解説などはありませんが、ポスターを飾る力強いキャッチコピーは比較的簡単な英語である上、ビジュアルもストレートで意図が伝わりやすく描かれており、きっと理解していただけると思います。


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こちらがノーマン・ロックウェルの作品。
サンクスギビングのターキーを囲む家族がモチーフのようです。
自由で幸せな暮らしを取り戻すための
戦いであることをアピールしているようです。


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太平洋戦争記念館の正面には、1945年のアメリカ軍上陸の際の写真が飾られています。


太平洋戦争記念館は多くの観光ツアーが立ち寄るポイントの一つです。グアムを訪れる日本人の多くが戦後世代であり、楽しいヴァカンスが過ごせる今日がどんな過去の延長上にあるのか考える機会になればと思います。また、日本側から見た戦争とは違う、17,000人を超える日本兵が命を落としたグアム側から戦争を見つめる機会にもなるでしょう。

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こちらはギフトショップ。


展示エリアを抜けるとギフトショップに出ます。第二次世界大戦にまつわる書籍やビデオ、子供向けの本、太平洋戦争記念館のオリジナルグッズもありました。英語での書籍が中心ですが、グアムの歴史として日本統治時代からアメリカ軍上陸までを詳細に記録した日本語ナレーション入りDVDはありました。

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開戦を知らせる当時の新聞。$2.00で売られていました。


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こちらは終戦を知らせる新聞で、$3.50です。


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第二次世界大戦中に国策として作られた音楽が収められたCD。


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グアムの第二次世界大戦を記録したDVDは3種類。


この日、ギフトショップで品定めしていると、太平洋戦争記念館のスタッフが「時間があるならDVDを見ていく?」と声をかけてくれました。そして奥の部屋に案内され、日本語のナレーション入りDVDを見せてもらいました。日本統治下でグアムのチャモロ人たちが強制労働をさせられたり収容所に入れられたりしたこと、多くの日本の若者が命を落としたこと、そしてアメリカはグアム奪還後グアム及びマリアナ諸島をアメリカの軍事拠点として整備し、隣島のテニアン島から広島や長崎へ原爆を乗せた飛行機が飛び立ったことなど、映像で追う歴史には人から聞く話や文章とは違う衝撃を受けました。では、そのDVDの一部をお見せしましょう。


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アメリカとスペインの戦争後、
アメリカ軍によって発展を遂げるグアムの様子。


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真珠湾攻撃の数時間後、グアムを攻撃した日本軍。


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日本統治が始まるとチャモロ人たちは強制労働や
強制収容を強いられました。


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真珠湾攻撃から数年でアメリカは国力を付け、軍事体制を整えます。


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日本統治下のグアムには、歌舞伎など日本文化が持ち込まれました。


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終戦後、多くの日本兵がジャングルに身を隠していました。
そして終戦から28年後、横井庄一元日本兵が発見されました。


皆さんもグアムに来られたら是非お立ち寄りください。ポスター展は少なくとも4月ぐらいまでは継続されるそうです。そしてお立ち寄りの際に時間があれば、スタッフに「DVDを見せて」(Could you let me watch the DVD?) と頼んでみるといいでしょう。DVDは15分程度で、観光ツアーの場合でも時間があれば見ていただいているそうですよ。

現在は観光業が盛んで、平和な南国の楽園ですが、グアムにも忘れてはならない哀しい歴史があることを学んでみる事も大切ですよね。でもグアムはスペイン統治時代の影響で、島民のほとんどがカトリックです。カトリックの「罪を憎んで人を憎まず」という思想が、島民の暖かさをさらに強くしていると感じています。
みなさんもぜひ、機会があればグアムで平和教育についても少し想いをはせてみてくださいね。

<インフォメーション>


店名:太平洋戦争記念館(War in the Pacific National Historical Museum)

営業時間:9:00AM~4:30PM 

定休日:サンクスギビング、クリスマス、元旦
住所:T. Stell Newman Visitor Center, Building 1657B, Old Army Reserve Center, Sumay, Guam 96915
ロケーション:マリン・コア・ドライブ、アメリカ軍海軍基地ゲート前
電話番号:671-333-4050
URL:http://www.nps.gov/wapa/t-stell-newman-visitor-center.htm